ひとめを気にするのはやめた

在宅で会社員グラフィックデザイナーをしています。 私と、フリーダムな韓国人の夫、またしてもフリーダムで頑固者の息子(3歳)の3人+フリーダムすぎる猫1匹で暮らしております。 私もフリーダムになりたい。

息子と2人で灯籠流しに参加したら無駄に大変だった

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よく行く公園の近くの川で、灯籠流しのイベントが行われるというので、私も息子と2人で参加してみる事にした。

 

 本来、灯籠流しとは死者の魂を送る為のものだが、この灯籠流しはそんなに深い意味は無いようで、願い事や絵などを灯籠に書いて流すという、けっこうライトな感じだった。

 

 

灯籠流し、いいじゃないかいいじゃないか。

 

 

孤独のグルメのゴローさんばりに内心ワクワクしていた。

 

灯籠流しなんて、これまでの私の人生で一度も関わった事の無いワードだ。

 

子供がいると今まで関わってこなかったイベントに関わろうという気になって、結構楽しかったりする。

 

その私のワクワクな気分を息子も感じたのか、息子も結構ワクワクしていた。

灯籠流しのポスターを見つける度に「とうろうながし行くんだよねー」と言っていた。

 

 

参加者は事前に灯籠制作キットを購入し、自宅で作成してそれを持って川へ向かう。

私は事前に2人分のキットを購入しておき、当日の午前中に、息子と2人で意気揚々と灯籠を作成した。

 

本来は死者の魂の行事なので、私はオバケの絵を書いた。

 

そしてそこに「自由」と書いてみた。

 

私の人生の目標と言ってもいい「自由」という言葉を、さも意味ありげに書いてみたかったのだ。

 

息子はそんな私に便乗して、いろんな色で虹のような丸を描き、「とうろうのおばけ」命名していた。

 

 

灯籠キットにはろうそくが付いていて、そのろうそくを木の板の中央の穴に差し込む。

 

ろうそくは木の板の横にセロテープで貼付けてあり、それを取る時に、息子がろうそくを真っ二つに折ってしまった。

 

泣きそうになる息子に私は「大丈夫大丈夫、テープで貼ればいいんだから!」

 

マスキングテープでろうそくを補強した。

 

マスキングテープなら燃えるし大丈夫だろうと思ったのだ。

 

今思うと、息子のろうそくは私の折れていないものと交換してやれば良かったのだが、私は灯籠をちゃんと作りたい!私の灯籠だ!みたいな母親らしからぬ気持ちがあったので、折れたろうそくはそのまま息子の灯籠に使われる事になった。

 

でも息子は自分の作った灯籠がえらく気に入ったようで、「ぼくのとうろう!」とはしゃいでいた。

 

私も自分の作った灯籠がえらく気に入り、「ママのとうろう!」とはしゃいだ。

 

 

開始の時間が近づいていたので、作った灯籠を持って川へ向かった。

 

開会式なるものがあるらしいのだが、まだ始まっておらず、ちょっとしたかき氷やパンなどが売っていたので、息子は「かき氷だ!かき氷食べたい!」と言い出した。

 

せっかく来たし私も食べたかったので、かき氷を購入し、近くに椅子とテーブルがあったので、そこに座って食べていた。

 

その時、二人分の灯籠がものすごく邪魔だった。

 

3歳児とものを食べるのはなにかと大変だ。

 

大体こぼす。

手がびちゃびちゃになる。

気をつけないと服もびちゃびちゃになっていたりする。

 

家の中だと気にしないが、外だし着替えも持って来ていないので、私は息子のかき氷を食べるサポートをするのでいっぱいいっぱいで、灯籠を持っている事ができず、その灯籠を狭いテーブルの上にギリギリで置いていた。

 

その様子を見かねた、一人の役員っぽい人の良さそうなおばさんが、

 

「灯籠、あっちに持って行っておいてあげようか?」

 

と言ってくれた。

 

見ると、川のところに灯籠がたくさん置いてあった。

 

ああ、あそこに置いておけばよかったんだなと思い、「すみません、じゃあお願いします」とそのおばさんに持って行って貰った。

 

 

かき氷を食べ終え、パンを買ったりしていたら、「開会式が始まりますので、川の方に集合してください」とのアナウンスがあったので、私と息子は川のほうへ移動した。

 

周りの人たちは、意外にも灯籠を持ったままの人が大半で、それを見て息子は

 

「あっ、とうろう!!なくしちゃった!!!」

 

と言った。

 

今の今まであんなに気に入っていた灯籠の事は忘れ去り、かき氷とパンに夢中だったのだ。

 

まったく現金な奴だ。

 

私は息子をたしなめ

「ほら、あそこに置いてあるから大丈夫だよ」

と言った。

 

見ると私と息子の灯籠がちゃんと川の横に置いてあるのが見えていた。

息子もそれを聞いて安心したようだった。

 

 

開会式は思いのほかものすごく退屈だった。

 

市長や周辺の学校の校長先生や、イベントを主催したおじさま達の話が、延々と続いたのだ。

 

私ですらかなり退屈だ。

 

息子はもう完全に飽きてしまって、足下の草をいじったりしていた。

 

それならまだ良かったのだが、とうとう限界になったようで、ちょろちょろ歩き始め、疲れたと言って近くにあった階段に座り込んでしまった。

 

階段は人が行き来していたので、さすがに邪魔だろうと思い、少し離れた駐車場に座れそうな石があったので、そこに座っている事にした。

 

ただ座って待っているのは無理なので、さっき買ったパンをそこで食べながら、開会式が終わるのを待っていた。

 

 

つまらない開会式が終わると、やっと灯籠流しが始まった。

 

最初はつまらない話をしていた偉い人たちの灯籠が次々と流され、それが終わると一般の人が灯籠を流していった。

 

狭い川辺にたくさんの人がいるので、まだパンも食べていたし、もう少し人がいなくなってから行く事にした。

 

やっとパンを食べ終わり、人も少なくなってきていたので、私と息子は灯籠を流すポイントまで行った。

 

ここらへんにあったはず~、と灯籠が置いてあった場所を見たのだが、私は愕然とした。

 

 

さっきまでたくさん置いてあった灯籠が、ひとつも無いのである。

 

 

ネガティブシンキングな私は、瞬時に最悪の事態を想像した。

 

つまらない話をしていた偉い人たちの灯籠も、同じ場所にあった。

 

そしてその灯籠を、役員の親切そうなおばさま方が、ぽんぽんと流しているのを目撃している。

 

まさか、私と息子の灯籠も、親切そうなおばさま方が流してしまったのではないだろうか。

 

 

その可能性がかなり濃厚な事実から目を背け、私は灯籠があった場所をくまなく探してみた。

 

明らかに子供が描いたものだ。勝手に流しはしないだろうと一縷の望みにかけていた。

しかし見つからない。

 

これはもう無いな、と私は確信していた。

 

一応、近くにいた役員のおばさんに

「あのー、ここに私たちの灯籠が置いてあったのですが、どこにありますか?」

と聞いてみた。

 

役員のおばさんは、えっ!とびっくりして

「さっきバーっと流しちゃったのよ!どうしよう!」

とあたふたし始めた。

 

その様子を見ていた息子は

 

「ぼくのとうろうがないー!!!!」

 

と崩れ落ちて大声で泣き出した。

 

「うわあああああん!!どうろーどうろー!!ぼくのどうろおおおおおお!!!」

 

と、どんどんヒートアップしてきたので、私は息子を抱っこしてなんとか落ち着かせようとした。

 

でも本当は私も泣きたかった。

 

息子が自作の灯籠を作って喜んでいた姿を思うと、どうにかしてやりたいと思ったし、私も自分の灯籠を流したかった。

 

私も心の中で

「どうろー!どうろー!!私のどうろおおおおおお!!!」

と泣いていた。

 

周りの人たちは、自分が流した灯籠を追いかけていって、「アハハ、ウフフ」と楽しそうな和やかな雰囲気に包まれている。

 

それに比べ私ら親子はどん底だ。

 

周りのキラキラした空気のなか、暗黒のネガティブオーラを発する闇の使者のようだった。

 

 

その様子にさっきの役員のおばさんが更に慌てふためき、他の役員のおじさんに相談していた。

 

そしたら、明るそうなおじさんがやってきて、

 

「こりゃーもう一回作るしかないなぁ」

 

と言った。

 

えっ!もう一回作るの!?

 

と私はびっくりした。

私の中にその選択肢が無かったのだ。

 

家で二人で楽しく作った灯籠。

 

あの灯籠じゃなきゃ駄目なのだ。

 

でももう流されてしまってその灯籠は無い。

 

このまま帰るくらいなら、また作って流したほうが確かにマシかもしれない。

 

そう思い、さっきの役員のおばさんに、キットがある所まで連れて行って貰った。

そしておばさんはこう言った。

 

「もうキット無いんだって…。」

 

私は絶望した。

 

息子はまだ私に抱っこされたまま、わんわん泣いている。

 

 

この境地に立たされ、私は何かのスイッチが入った。

 

 

役員の人はただの人の良いおじさんとおばさんだ。イベントの手伝いをしているに過ぎない。

 

主催者の方々も、つまらない話を延々とするタイプのおじさま方だ。

このイベント自体、マニュアルがあったりきちんと統制されているものではない。

 

人任せにしていては、この絶望から脱する事は不可能だ!!

 

急に頭が冴え、冷静になって集中力が増したように思えた。

 

よく推理もののドラマで、探偵役が全ての事柄をつなげて真実が見える瞬間の描写があるが、まさにそんな感じだった。

 

スペックでいうところの、習字で半紙にキーワードを書き、それをビリビリと引きちぎり、頭の上にバーッと投げ散らかすあの瞬間だ。

 

そして私は探偵さながら、状況を冷静に分析し始めた。

 

灯籠が流され始めてから、そこまで時間は経っていない。

 

下流の様子は分からないが、そのまま灯籠を川に流しっぱなしにしておく筈がない。

 

おそらく下流には、灯籠を回収する人がいる筈だ。

 

今追いかけて探せば、灯籠を取り戻すことができるのではないか。

 

私は心の中で、「いただきました」とつぶやいた。

 

 

そうと決まったら急がなくてはならない。

 

私は心配してくれた役員のおばさんに、「ちょっと探してみます!」と言い残し、急いで川へ戻った。

 

だんだん泣きつかれてきた息子に

 

「灯籠を探して!見つけるんだよ!」

 

と言うと、

 

「とうろうさがす!」

 

と少し立ち直ったので、息子と二人で、流れている灯籠の中から私と息子の灯籠を探した。

 

周りの人たちは、自分の流した灯籠を追っていて

 

「あ、私の灯籠、速い速い!」

 

などと相変わらず「アハハ、ウフフ」なキラキラした和やかな空気だった。

 

その中、半べそをかきながら必死で灯籠を探す私たち。

 

よーく見ないとなかなか判別がつかないので、川を凝視しながら下流へ向かった。

 

相変わらず私たちは獲物を探す闇の使者だった。

 

 

そしてついに闇の使者は、見覚えのある絵柄が流れているのを発見した。

 

私のおばけの灯籠だった。

 

息子も私の灯籠を発見し、

 

「あ!!ママのとうろう!!!ママのとうろうながさないでぇーーー!!」

 

とまた絶望して泣き始めた。

 

息子よ、絶望している暇は無い!!

 

私の灯籠があるという事は、息子の灯籠も近くにあるに違いない。

 

よく見ると、ちょっと離れたところに息子の灯籠が流れているのを発見した。

 

「あった!よし!行こう!」

 

と泣いている息子の手を引き、下流まで急いだ。

 

 

下流まで行ったら、予想通りおじさんが何人か川に入っていて、灯籠を回収していた。

 

そして、その回収された灯籠は、即座に解体されて分別され、袋につめられていた。

 

マズイ、あそこまで行ったらもうおしまいだ。

 

私は近くで回収しているおじさんに事情を説明し、おじさんに灯籠を取ってもらう事になった。

気のいいおじさんで、快く快諾してくれた。

そしてその場所で、流れてくる灯籠をひたすら待った。

 

ついに私と息子の灯籠が流れてきて

 

「あ!!あれです!!オバケのやつ!!!」

 

とかなり興奮しておじさんに言った。

 

ここで取り逃したら、即座に解体されてしまう。

なんとか確実に取って貰わなければと必死だった。

 

おじさんは無事に灯籠を回収してくれた。

ろうそくがついていたので、持ち歩くのは危険だし流すポイントで火はつけて貰えるので、私は何の躊躇もなく火を吹き消したが、おじさんは

 

「いいの?消すよ?」

 

とちょっと躊躇していた。

 

その様子を見て、私は完全に灯籠流しの本来の目的を失っている事に気がついた。

 

いや、いいのだ。私と息子の本来の目的は、灯籠を流して流れた灯籠を見る事だけだ。

 

灯籠が戻ってきて、息子は笑顔を取り戻した。

 

「ぼくのとうろうだ!」

 

と、ものすごく嬉しそうだった。

 

灯籠の下の部分は濡れていたし、ろうそくも半分になってしまったが、息子と一緒に作った灯籠が戻ってきて私もすごく嬉しかった。

 

何より安心した。

 

そして達成感でいっぱいだった。

 

これが、探偵が犯人を捕まえた時の安堵感と達成感なのだろうか。

 

私は、自分の犯した罪を盛大に告白し、なんだかスッキリした表情で探偵を見つめながらパトカーに乗り込む犯人を見守る、探偵のような気持ちになっていた。

 

 

おじさんにお礼を言い、私と息子は意気揚々と取り戻した灯籠を持って流すポイントまで歩いた。

 

さっきまでの絶望感はどこへ行ったのか。

 

もう私と息子は希望でいっぱいだった。

 

流すポイントまで戻ると、ろうそくをつけて貰った。

 

「取ってきたの?」

 

と濡れた灯籠と半分のろうそくを不審に思われたので、

「他の人が流しちゃったから取って来たんです」と言った。

 

そうしたらそこに居た人がみんな、それは悲しいねぇ。と同情してくれた。

 

 

そして、やっと、灯籠を流す瞬間が来た。

 

なんだか長かった。ここまでたどり着くのにこんなに苦労するとは…

 

と私が感慨に浸っている中、

息子はソッコーで灯籠を川に投げ入れていた。

 

 

私と息子の灯籠が、ゆっくりと流れ始めた。

 

最初の頃は明るかったが、もうすっかり辺りは暗くなっていて、灯籠が綺麗に浮かんでいた。

 

自分達の灯籠を追いながら、私たちは少しずつ歩いた。

 

「あ!ぼくのとうろうはやいよー!!」「アハハ、ウフフ」

 

などと言い合いながら私は、やっとあのキラキラした和やかな仲間になれたんだと思った。

 

もう私も息子も闇の使者ではない。

 

苦労した分、感動もひとしおだった。

 

 

しばらくすると、息子の灯籠だけやけにチカチカし始めた。

 

ちょっと中で燃え広がりつつあるような、危うい感じだった。

 

即座に私は思い出していた。

 

あのマスキングテープで補強したろうそくの事を。

 

そう、マスキングテープが燃えるという予想は当たっていたものの、燃えすぎて燃え広がってしまったのだ。

 

そして危うい感じでなんとか生き残っていた息子の灯籠は、ゴール目前にして絵を描いた紙にも燃え移り、燃え尽きてしまった。

 

「うわーん!!ぼくのとうろうもえちゃった!!」

 

とまた息子は絶望に打ちひしがれていた。

 

私はこの時、ひどく後悔した。

自分のろうそくと交換してやれば良かったと。

 

自分の母親としての底の浅さを思い知って、私も絶望した。

 

でもそんな姿を息子に見せる訳にはいかない。

 

「火は燃えるものだよ。しょうがないね。ほら、ママのはまだあるよ、ほら、ほら」

となんとか気をそらそうと必死だった。

 

その必死の甲斐あってか、息子は泣き止み、私の灯籠を見送っていた。

 

 

帰り道、こんな大変な事になるとは思わなかったけど、なんとかなったし、良かった良かった、息子は今日の日をどういう風に記憶に残すのだろう。楽しい思い出だといいな。

 

などと思いながら歩いていた。

 

息子も、楽しかった!と言っていて、良かった良かった、とか思っていた。

 

家に帰ってしばらくして、夫が仕事から帰ってくると、今日灯籠流しをやった事を知っていた夫は

 

「今日、灯籠流しどうだった?」

 

と息子に聞いていた。

 

息子は

 

「とうろうね、ながしたんだけど、ぼくのとうろうもえちゃったんだよ。」

 

と悲しそうに言っていた。

 

息子にとっては、灯籠を他の人に流されてしまったり、私と一緒に取りに行った事よりも、燃えてしまった事のほうが印象的だったようだ。

 

 

私は再度、私の母としての底の浅さに絶望した。

 

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 おしまい。

 

 

 

 

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